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Withコロナ時代、街は少しゆったりするか

 

新型コロナウイルスが世界的な脅威となってから半年以上経とうとしている。 感染の勢いはいまだ収まるどころか、多くの国や地域が深刻な状況から依然抜け出せ ていない。日本ももちろんそれらの国の1つだろう。 今まで当たり前と思っていた生活が、 世界中でほぼ同時に当たり前でなくなってしまっている訳だが、かつて人類が何度も体験してきた感染症の再来だと一括りに諦観するには余りに重い。 日々普通だと思って機能していた社会にとっては、 すべてが初めての事態としてのしかかっているからだ。人々が足早に歩く華やかでスピード感溢れる典型的な都市の日常は、人との接触が限りなく抑えられ時間の流れが一気にシフトダウンさせられたような生活スタイルヘの大変換を余儀なくされているだろう。
そこで、アトランダムなライフスタイルの Before/After を自分に置き換えてみた。
Before における日常は、発達した公共交通機関を利用して好きなところに頻繁に出か けること。 毎日会社や仕事場に出かけること。 プライベートであれ仕事であれ、人々と実際に会って相談をし講論や打ち合わせをし物事を成し遂げていくこと。 家族 友人 知人 仕事先と、折に触れ外で共に食事をし酒を酌み交わすこと。 お店で自由に買い物をし散髪やマッサージやジムなどでリラックスすること。 映画やコンサートや芝居、展覧会や展示会や見本市に出かけ心を豊かにすること。 国内外を問わず、プライベートな旅行であれ仕事であれ、いつでもどこでも自由に出かけること。 After における変化は、在宅時間が人生初めてというほど長くなったこと。家から外に出たときの日常的な行動範囲が以前よリ一気に減ったこと。 外での飲食機会や娯楽が激減したこと。 対面機会なしでコミュニケーションを図ることに慣れざるを得なくなったこと。 国内外を問わず目的を問わず、有形無形の移動制限が深刻にかかっていること、など思いつく。そして、当分続くであろうWith コロナの下では、完全な意味で Before に戻ることはないのかもしれない。 After なスタイルが日常の一部として定着していくと同時に、そのスタイルに共感し、Before に戻らないことを選ぶ人々が相当数出てくるかもしれない。仮にそうであるならば、通勤人口が減り公共交通サービスのレベルが下がることにも違和感がなくなるだろう。 リモートでの業務遂行が十分可能だとなれば企業のオフィス占有面積は減少傾向を見せるだろう。密集・密接を避けることが必須だとするならば、都心部の高層マンションなど高密度な居住形態は敬遠されていき、人口の郊外化現象が久々に脚光を浴びるだろう。 何よりも、リアルな対人接触を基本とした従来型のビジネス慣行が敬遠され、より進化したツー ルによる業務のヴァーチャル化が一気に進むだろう。人間関係構築の場として必須とさえ言われた飲食施設需要も減っていくだろう。

 

さて、都市や不動産利用形態は、今回の危機を契機にどこに向かっていくのだろうか。(磯部)