銭湯のある街
銭湯の数は、1968年に1万7,999軒に達して以降、一般家庭における内風呂の普及を背景に減少し続け、2024年4月現在、ピーク時の10分の1以下である1,653軒となっています。
銭湯は、その公共性の高さから「公衆浴場法」によって管理されています。入浴料は「物価統制令」の対象となっており、各都道府県知事によって上限が決められています。従って、「その他の公衆浴場」に分類されるスーパー銭湯やサウナ等と違い、料金を自由に設定することができません。反面、「公衆浴場確保法」により、水道料金の減免や固定資産税の軽減措置等、行政からの様々な補助が出ています。それでも、利用者数の減少や燃料費の高騰、経営者の高齢化、施設及び設備の老朽化等の要因により、廃業に歯止めが利かない状況にあります。
銭湯は、地域における保険衛生水準の向上という役割のみならず、地域コミュニティの核としての側面も併せ持ちます。住民同士がリラックスしながら気軽な会話を行える貴重な場所であり、更には今後高齢化社会を迎え、一人暮らしの高齢者の増加が予想される中、高齢者の見守りの場としての機能も期待できます。銭湯は日本の伝統文化であるとともに、地域の資源です。今後も存続させる為には、政策等の見直しが必要なのかもしれません。
筆者にとって銭湯といえば、真っ先に祖父を思い出します。祖父は飯坂温泉がある福島県飯坂町で暮らしておりましたが、自宅にお風呂があるにもかかわらず、生涯ほぼ毎日銭湯通いでした。筆者も幼少期に何度か連れられて行ったのですが、飯坂名物の熱い湯には容易には入れませんでした。その地域で暮らす人々の生活に根差した銭湯のある風景が、街の個性や住人の思い出を守るためにも、末長く受け継がれていくことを願います。(祐紀)