「かもめのリレーは可愛いけれど」
2022年秋、九州新幹線の西九州ルートが開業します。佐賀市付近を経由し、福岡市と長崎市とを結ぶ路線ですが、現在は、総線路延長約66kmの武雄温泉駅・長崎駅間のみが新幹線の「かもめ」であり、武雄温泉駅・博多駅間は、在来線の新たな特急が運行するという対応となっています。新幹線と特急とは武雄温泉駅の対面ホームでの乗り換えとなりますが、新特急の名はその名も「リレーかもめ」で、文字通り、「かもめ」と「リレーかもめ」の乗客リレーとなります。
新幹線利用により、博多駅・長崎駅間の所要時間は、現在の特急「かもめ」利用よりも約30分短縮します。しかし、直通運転だった「かもめ」と違い、新幹線利用では、上述の通り乗り換えの必要が生じてしまいます。「かもめ」達のリレーを想像すると微笑ましいですが、現実は、新幹線で少し速くなったけれど、乗り換えでちょっと面倒になったという、微妙な状況です。
何故このような事態が生じているかというと、九州新幹線の未着工ルートである新鳥栖駅・武雄温泉駅間については、地元である佐賀県が新幹線建設を求めていないからです。博多駅・佐賀駅間の所要時間は、現在の特急利用で約40分、新幹線開業後は約25分となります。15分程度の短縮のために、佐賀県内の整備費として総額1,000億円もの建設費を拠出した上に、並行在来線をJRから経営分離するのは、費用対効果として適切でないというのが、その理由とされています。博多駅から長崎駅への直通は、ユーザーにとって魅力的である一方、佐賀県の言い分も理にかなっているので、当分「かもめ」たちのリレーは続きそうです。
日本三大美肌の湯である嬉野温泉や、伊万里焼・有田焼・唐津焼等の美しい陶磁器、新鮮な海産物、風光明媚な景色等、西九州には魅力がいっぱいです。筆者は長崎県も佐賀県も行ったことがないので、いつか「かもめ」たちに乗って周遊してみたいと思います。(祐紀)