JAPAN VALUERS

ペットの家族化に伴い進む社会の変容

年々少子化が深刻となっておりますが、一方で、ペットの飼育数は増加が続いています。(一社)ペットフード協会の調査によると、日本における2024年のペット(犬・猫)の新規飼育数は80.3万匹で、同年の人間の出生数に比して約2割上回る結果となりました。総数については2024年の15歳未満人口が1,400万人であるのに対して、ペットは1,595万匹と約1割強も多い状況にあります。世帯換算では5世帯に1世帯はペットと暮らしているという結果が出ており、また保険会社の意識調査によると、飼育者の6割超がペットは人間と同等の家族であるという回答でした。このように、ペットの存在は我が国の社会において大きな位置を占めています。

ここ数年で不動産市場でも、ペットと暮らす人をターゲットとした商品が多く企画されるようになりました。近年よく目にするようになったのは「ペット共生型賃貸住宅」です。「ペット共生型賃貸住宅」とはその名の通りペットと共に生活することを前提として建てられた賃貸住宅であり、「賃貸住宅でもペットを飼いたい」というニーズの高まりを受けて開発されました。⼀般的なペット可とされている物件とは違い、ペットとの暮らしに特化した設備が充実しています。例えば壁紙はペットが傷つけてしまった場合でも一部の交換だけで済むようになっていたり、ドアにはペット用の潜り抜け窓がついていたり、玄関の脱走防止フェンスやキャットウォーク、ドッグランまで付帯している物件も見られます。ペットの入居時審査や飼育規定がしっかりしており、基本的にはペットを飼育している人が入居しているので、住民間トラブルが少ない点もメリットです。

10年前には、ペットの存在を重視した賃貸住宅はあまり見られませんでした。このことからも、家族の構成要員にペットが組み込まれつつある状況に合わせて、社会も変容していることがわかります。今後も、あっと驚くようなペット向け商品が開発されるかもしれません。