無電柱化は進むか
我が国の無電柱化は、先進諸外国と比べて著しく低い水準にあることが指摘されています。無電柱化の工事には1kmあたり約5億円以上とされるコスト面での課題や、1年で数百メートル程度といわれる工期の問題、さらにはガスや水道等の既存インフラとの併設の難しさや権利関係の複雑さも挙げられています。
無電柱化は防災や安全の向上、景観の点からも望ましいとされていますが、低コストの工法が生まれていることや、近年の災害頻度の増加や、高齢者の増加、訪日外国人の観光需要増加等により、その必要性が高まっています。
こうした情勢の変化に対応して、2016年には無電柱化の推進に関する法律が定められ、国や自治体において検討が進められています。東京都では都市開発諸制度を改定し、民間の再開発事業における無電柱化を義務付け、また、開発区域外の道路では無電柱化の延長に応じて最大200%の容積率割り増しを与えるなど、具体的な施策を設けています。
実際に無電柱化をした街並みでは、確かに歩道は広く歩きやすく、すっきりとした景観が見られます。災害時に電柱が倒れることもなく、電線の切断による事故も減少することが予想されます。限られた財源の中、都市インフラに出来る投資は多くはないと考えられますが、防災や安全の向上、景観の良化といった地域要因の改善は、そうした地域を構成する個々の不動産の経済価値にもプラスの影響をもたらします。
インフラ整備による地域力の向上が土地価格を含む経済価値の上昇を促し、税収増とその再投資といったサイクルが生まれることが、無電柱化推進の鍵となるかも知れません。(小室)