JAPAN VALUERS

木造超高層ビルの時代

 

高さ350m、地上70階建ての木造超高層ビルが、東京の丸の内に登場するかもしれません。

 

2018年2月、住友林業㈱が「W350計画」と称し、木造超高層ビルの開発構想を発表しました。現在国内で最も高いビルは約300mの「あべのハルカス」なので、350mの計画は間違いなくトップレベルの高層建築となります。それを木造で実現するなど、可能なのでしょうか?

 

調べてみると、近年海外においては木造ビル建築がブームとなっているようです。既にいくつか木造高層ビルが誕生しており、2012年にはメルボルンで10階建て高さ約32mの集合住宅が、2014年にはノルウェーで14階建て高さ約49mの集合住宅が竣工しています。今現在における世界最高層の木造ビルは、2017年に林業先進国のカナダにおいて竣工した18階建て高さ約58mの学生寮「ブロックコモンズ」です。それを越す24階建て高さ約84mのビルがオーストリアのウィーンで建設中であり、ロンドンでも約305mの木造高層タワー計画があります。

 

増加する木造高層建築の背景には、新しい木造技術の誕生があります。CLT(直交集成材)と呼ばれる厚板構造大判パネルの開発をはじめとして、海外を中心に、従来のコンクリートや鉄鋼に代えて、木材を高層建物に使おうという革命が起きています。木材は環境に優しく、計画的な伐採、植林をすれば、森林保護が図られます。国土の約7割を森林が占める森林大国の日本にとっても、木材の革命は朗報なのではないかと思います。それに我が国は、約370年も前に高層木造建築を竣工させています。高さ約55m、誰もが一度は映像で目にしたことがあるあの建物、そう、東寺の五重塔です。それを踏まえれば、「W350」も実現可能に思えてきます。と言っても、実は「W350」の完成予定は2041年なので、まだまだ先のお話です。(祐紀)