不動産鑑定士西川尚登のミャンマー紀行2【街の課題編】
成長著しいミャンマーですが、都市機能や不動産自体に関して様々な課題を抱えているのも事実です。これらの課題のうち、私にとって特に強く印象に残ったものを挙げたいと思います。
まず、ヤンゴン郊外の昔ながらの住宅が密集する地域ではゴミがあふれてしまっていました。住宅といっても湿地のうえに建つ木造トタン屋根の高床式の小屋です。開発が進んでいない地域ではこのようなスタイルの家に住んでいる人も多いのですが、車から家の中を覗くとスマートフォンを触りながらボトル飲料を飲んでいたりします。ここで問題となるのが、急速なライフスタイルの変化にインフラ等が追い付いていないことだと思います。何十年も昔の時給自足の生活をしていたような時代なら、家から出たゴミをそのまま湿地に捨ててしまえば、雨に流されたり土に還ったりすることで、ゴミは自然と処理されていたことでしょう。しかし、現在では家庭ゴミにプラスチックや金属がまざることとなり、これらが湿地を漂うこととなっています。住民の方のモラルというよりも、ゴミを捨てる場所がなく、回収・処理機能も脆弱というのが現実ではないでしょうか。産業振興に不可欠な電力や交通には一定の資金が投じられているミャンマーですが、市民生活をより快適にするインフラへの投資が進み、これが広く行き渡ることが待たれる状況にあるといえます。
次に、テナントとしてお洒落な店舗が入っているビルであっても、外壁がすすけてしまっていました。一般的にミャンマーでは建物の継続的なメンテナンスがまだ浸透しておらず、激しい雨や高温多湿などの厳しい自然環境も相まって、一般的な建物は急速に劣化してしまいます。弊社の現地法人が入居するビルも築3年程度なのですが、共用部にはほこりや汚れが目立ち、専有部であるオフィスとのギャップに驚かされました。ヤンゴンでは新しい建物がどんどん建っていますから、既存の建物にコストを投じて価値を維持するという視点に至り難いというのが、実態ではないでしょうか。
つづく